夜驚症(やきょうしょう)について

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赤ちゃんが夜泣きをするのは当たり前のことで、それ自体は病気でもなんでもありません。しかし、おっぱいから離れ、睡眠リズムが安定する時期になっても突然夜中に大泣きするようだと、「この子は大丈夫なのだろうか?」と気になってしまいます。そして、このような状態を夜驚症(やきょうしょう)といいます。

夜驚症の子どもは、寝ついてから12時間すると、突然大泣きして起き上がってしまいます。でも、目を覚ましているわけではなく、朝から聞いても昨夜のことはまったく覚えていません。泣き叫ぶのは短時間のときもありますが、1時間以上にわたることもあり、起こる頻度が高く、泣く時間も長いと、世話をする家族は睡眠が妨げられ、だんだん疲弊してしまいます。

夜驚症の子どもをもつ家族に詳しく状況を聞いてみると、「親から叱られた日の夜によく泣いているようだ」という傾向がしばしば明らかになります。叱られたという気持ちのモヤモヤが睡眠に影響するのかもしれません。「交通事故や災害に遭った後から突然、夜に泣くようになった」という話もよく聞かれます。

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事故などのエピソードに伴って出現したものは、個人差はありますが、経過をみていると徐々に消失していくことが多いようです。いわゆる「日にち薬」です。ただし、エピソードの重大さや、子ども自身の「かん」の激しさ、不安の強さによっては改善までに長期間を要する場合もあります。

叱られた日の夜に起こるからといって、まったく叱らないわけにはいかないのが子育ての難しいところです。とはいえ、あまりにも細かいことで叱りすぎていないか、親が感情的に声を荒げていないかには注意しましょう。「叱らずに子育てしよう」なんていうのは幻想だと思いますが、親が感情に任せて子どもにあたっていないかどうかは検証が必要です。「叱る」と「怒る」は違うとよく言われますが、このような機会に自分自身の行動を振り返ってみることも大切です。

子どもに夜驚症が続いて親の方が睡眠不足になると、「また今日もこの子のせいで眠れないかもしれない」と暗澹たる気持ちになったり、「この子を殺して私も死にたい」というくらい追い詰められたりすることがあるかもしれません。本当にそうならないために、家族だけで抱えすぎず、早めに医療機関に相談するようにしてください。話を聞いてもらい、子どもの状態を知り、見通しが持てるようになると、親はちょっぴり楽になります。そして、少しだけでも落ち着けば、子どもにも穏やかに接することができるようになるものです。

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夜驚症の特効薬があるわけではないのですが、子どもの情緒安定のために、しばしば漢方薬を用います。甘麦大棗湯という漢方薬は、甘くて小さな子どもにも服用しやすいお薬で、夜寝る前に1包服用させると比較的よい効果が得られます(ただし、長期連用はできません)。お医者さんに相談されてみてください。

著者

長崎県立こども医療福祉センター副所長兼医療局長 小柳憲司
著者 小柳憲司(コヤナギ ケンシ)
所属・役職 長崎県立こども医療福祉センター副所長兼医療局長
長崎大学医学部、長崎大学教育学部、佐賀大学医学部、長崎医療技術専門学校非常勤講師
専門領域 小児科学、心身医学
主な著書 身体・行動・こころから考える 子どもの診かた・関わりかた(新興医学出版社)
学校に行けない子どもたちのための対応ハンドブック(新興医学出版社)
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